コンセプト

 AI文明に向かって急速に歩を進める人類は、自らが開発したAIの圧倒的質量の能力拡大による恩恵と引き換えに、人間本来の多様な能力と独自性さらに尊厳までをも失う根源的危機に立たされている。人類がこの危機を打開するには、(AIロボットを含む)AIには決して存在しない人間の本質である“動物細胞生命体性”(略称:動物細胞性)を基盤とする身体性に覚醒、着目し、“性質”のままではさしたる威力とはならないこの本質=身体性を豊穣で絶大な威力を発揮する能力に変換(これを「能力化」という)する専門的、体系的なトレーニング方法の開発とその普及、実践に、早急かつ恒常的に取り組むことが必須不可欠である、と考える。この考えのもとに開発、広く一般公開しているのが「高度運動科学トレーニング」である。

 ところで「動物細胞性に立脚した能力化(これによって育成される広範な能力を「本質力」という)」というと新奇なことに思われる方が多いだろうが、遡ってみればこの「能力化」は既に室町前期の武術にその考え方と取り組みが存在し、さらにはこうした考え方を最も色濃く継承体現した宮本武蔵は、日本人の著作として世界で最も読まれてきたと言われる『五輪書』の中の「地の巻」において、この「能力化」を「水を本として、心を水になるなり」とし、さらに「水の巻」においてはこの「能力化」の発展形態を「水を本として、利方の法をおこなふ」として、考え方から方法論にいたるまでの詳細な記述を残している。

 また他方、高度化を進める現代スポーツの最先端、トップオブトップのシーンでは、この「能力化」を明示する事例が既にいく例も観察されている。それが陸上100メートルにおいて、おどけふざけたスタートパフォーマンスにより驚畏の世界記録958を達成したウサイン・ボルトであり、赤ちゃんのごとき柔らかさと可愛らしさと素直さをメジャーリーグのグラウンドでふり撒きながら、投打さらには打走二刀流で史上初の記録を次々に達成する大谷翔平であり、21世紀最高のサッカー選手として最小クラスの身体をもって天衣無縫のパフォーマンスを体現して見せてきた、あのリオネル・メッシである。

 では古今にわたるこの「能力化」の基盤とは何かと言えば、金属や人工素材でできた機械であるAIロボットにも、細胞壁でガチガチに固められ拘束された植物細胞にも決して存在しない、動物細胞固有の「細胞間液など水を主体とした液体とダイナミックで多次元的複雑な運動に同調する細胞の潤滑揺緩流動性」すなわち擬態語を使えばユルユル、トロトロ、スルスル、ニュルニュル、スパスパと表現できる「細胞のゆるみ」である。

 世界記録で疾走中のボルトの魚やトカゲのごときグニャグニャ、ユルユルの身体性は、まさに動物細胞のユルユル、トロトロ、ニュルニュルを基盤としていたのである。そして、あの大谷翔平の赤ちゃんのごとき柔らかさと愛らしさとメジャーリーグに一人しかいないあのトロトロ、グニャグニャ、スルスルのバッティングも、この「細胞のゆるみ」を基盤としている。さらにメッシの変幻自在にしてユルユル、スルスル、スパスパかつ強靭な身体性もその基盤は圧倒的な「細胞のゆるみ」そのものである。そして武蔵は、この「細胞のゆるみ」に立脚する身体性を「水を本とする」と喝破したのである。

 これまでの論述から得られる結論は、今後スポーツに経験したことのないほどの高度化、革命的な進化が起こるとしたら、その過程は、AI文明化において人類が「動物細胞性に立脚した能力化」によりその能力と独自性と尊厳を守り育てていく過程と、その論理においてもその方法論においても完全に一致した基盤に立脚するはず、ということである。

 本書店が開設にあたり、まずは武蔵と現代スポーツのトップシーンを飾るアスリートたちを、その「本質力」を比較検討するかたちで次々に取り上げるのは、この結論に基づく。

 また本書店が全情報を無料で提供することは、AI化に少しでも遅れることなく最速でこの「能力化」を全社会、全人類に普及するためであり、1%の本格派の方々を対象としたことは、この1%の方々こそが、まず、この理論とトレーニング法を通じて、人類の能力と独自性と尊厳を守り育てるための生き方、行動の先頭に立たれる方々であろうと、信じるからである。

 さて最後になるが、本書店名にある「天才情報」について驚くべき話をしたい。それはウサイン・ボルトも大谷翔平もリオネル・メッシも、まぎれもなく偉大なアスリートと確信するが、この「動物細胞性に立脚する能力化」においては、完成状態に遥かに及ばぬ発展途上にあるという事実である。彼らが多大な伸び代を残している原因は、彼らがこの「能力化」の専門的理論と方法を知る機会なく競技人生に取り組んできたことに尽きよう。つまり「本質力」の開発度において、専門的理論と方法なしに天与の才能だけで50%を超すことは不可能、ということなのだ。

 私はこの事実を本当に惜しむべき、放っておくわけにはいかないほど勿体ないことと考えている。人類は「本質力」を80%にも、90%にも開発し進化したボルトの走りを見たかったはずだ。同じく大谷のプレーを、メッシのプレーを見たいはずなのだ。何故なら、「本質力」を80%開発したボルトの走りは、余裕で8秒台と推測できるからだ。

 したがって、本書店で提供する情報は、先天的天才でない多くの人類が後天的に「本質力の天才」に進化するための最適な理論と方法の情報であるばかりでなく、既に天才として活躍している大谷、メッシ……等のアスリートは言うまでもなく、経営・芸術・科学研究・医療などあらゆる分野の天才たちが、さらにその上を目指し進化するために最適な理論と方法の情報でもなければならないはずなのである。書店名に「天才情報」を加えたのはこうした背景あってのことである。

 202511

高岡英夫